ご意見・ご質問箱


 
 
   
   第9回 「ご意見・ご質問箱」

子供を立派な後継者にするには?
(広島県 42歳・男性)
 
私は中小企業の社長ですが、子供に跡を継がせたいと考えています。子供を「素晴らしい後継者」にするための、重要な留意点についてご教示下さい。
                    
(前回からの続き)
 
 
子供を信じて任せること。
     幅広い経験をさせること。
(龍馬社長大学学長、奴田原惇郎)

● 平社員からのスタート
  子供は、必ず平社員からスタートさせるべきです。
  いきなり取締役に据える人がいますが、何を考えているかです。
  そんなことをすれば以前から在籍している社員の感情をまったく無視することになり、社員の労働意欲が減退しかねません。
  DO社員(やる気と能力の双方を持ち合わせている社員)の労働意欲が減退すれば大変です。
  これにより、今まで創業者社長が一生懸命に築いてきたものが、無残に壊れることもありえます。
  その際最も困るのは子供です。
  子供かわいさが、結果的に子供を困らすことになります。
 父親である社長は、絶対に間違わないようにしてください。
  また、平社員からスタートすれば、同年配の社員とのコミュニケーションも取りやすく、いろいろな本音に近い話も聞けます(この本音が非常に大切です)。
  こういったことが将来、社長になったとき、きっと役に立ちます。

● 二代目はかえって難しい
 創業者はゼロからのスタートですが、二代目は既存の企業文化よりのスタートとなります。
  企業文化には、良い文化もありますが、当然に悪い文化も存在します。
  つまり二代目は、多かれ少なかれ、悪い文化を持ってスタートするのです。
  また、社員は創業者の色に良くも悪くも染まっています。
  二代目はその改善から始めなければなりません。
  急激な改善は消化不良を起こすかもしれませんが、これをこわがっていてはなにもできないこととなります。
  ある二代目社長は,このことに大変苦労をしました。
  世間では二代目の方が、創業者よりやさしいと考えているほうが多いようですが、私はかえって難しいと思います。

● 子供を信じて任せないと
             後継者はダメになる

 A社は、父親である会長が裸一貫から築いた会社で、現在は、息子さんが社長をしています。
  最近の業績は急激に悪化し(原因は経営環境の変化です)、若手のDO社員の退職が多いとの事。
  今のままでは潰れると口を酸っぱくしていっているのに、会長は結果的に社長(息子さん)のしようとすることを、全てつぶしてしまうのです。
  私は「会長を退いて、早く息子さんに全てを任せるべきだ」と助言していますが、父親は頑として動きません。
  結果的に、父親が息子の足を引っ張っています。
  しかし、これに父親は気付いていません。日本の全ての社長さんにお願いします。
  「息子さんを社長にしたからには(また、今後するからには)、息子さんを信じて、早く任せてあげてください。でなければ後継者は育ちません。また、そうしないと、いくら素質がある息子さんでも、必ずつぶれます」。

● 幅広い業務を経験させる

 社長に要求される能力の一つにバランス感覚があります。
  知識や経験が一方のみに偏っていると大変です。
  そのためにも様々な職種の経験をさせることです。
  現場(工場)を経験したら、次は営業、次は経理・・・など。
  社長はその道の専門家になるわけではないので、幅広い業務を経験することが必要です。
  バランス感覚とは、体験の中から必ずや生まれてきます。
  また、経験により各業務担当者の気持ちや考え方、苦労なども理解でき、社長のモチベーション教育につなげることも可能となります。

● 良い付き合いで成長させる
 社内だけの経験では、どうしても幅が狭くなります。
  できるだけ社外の人々、トップの人々などとの付き合いを多くすることが必要です。
  付き合いを通じて、良いことも悪いことも学ぶことができるし、情報も入ってきます。
  そのためには、子供より少しレベルの高いほうが理想です。
  もしも、レベルの低い、やる気のない経営者たちと親しくなり、子供までやる気をなくしたら大変です。